K-pop

LE SSERAFIM:二つの夜のあいだの3年 —— 4世代K-POPで最もグローバルな軌跡

4世代K-POPのスタートラインは狭く、そして早く閉じる。デビューと同時にグローバルな舞台に立たなければならず、2、3回のカムバックのうちに自分の場所を証明してこそ次のチャプターが開く。2022年5月、LE SSERAFIMは新人グループが必ず背負うのと同じ問いを抱えて、その狭いラインに立った —— このグループはK-POP4世代の最前列に最後まで留まれるのか。

2023年の秋、LE SSERAFIMはゲーム『Overwatch』とともに作った「Perfect Night」を携えてBlizzConのステージに立った。K-POPアーティストとして初めて招かれた場だった。そして2026年9月、同じゲームとともに作った『Made My Night』をリリースし、その2日後に再びあのステージへ上がる。二つの夜のあいだに置かれた3年が、このグループがどこまで来たのかを何よりも正確に語っている。

LE SSERAFIM Made My Night ミュージックビデオティザー —— Overwatchコラボのネオンに照らされたサイバーパンク都市を背景に立つ5人
Made My Night MVティザー、Overwatchとともに制作 © Source Music

4年の座標 —— 数字が語るもの

デビューから4年の軌跡を短くまとめると次のようになる。

  • Billboard 200トップ10に5作連続 —— 『UNFORGIVEN』(2023年、6位)、『EASY』(2024年、8位)、『CRAZY』(2024年、7位)、『HOT』(2025年、9位)、『PUREFLOW pt.1』(2026年、10位)。K-POPガールグループとしてはTWICEに次いで2組目であり、デビューからの最速記録(Star News、2026年6月)
  • Billboard Hot 100で初のトップ40入り —— 「ICONIC BY MISTAKE」(2026年6月、ILLIT・KATSEYEとの合作)が38位。単独名義での最高記録は「SPAGHETTI」(2025年10月、ft. j-hope)の50位のまま(Billboard)
  • 『PUREFLOW pt.1』発売初日にHanteoで435,675枚 —— 2026年の4世代K-POPガールグループのアルバムとして初日最高枚数。Circle Chartのアルバムランキングでも570,408枚で1位となり、Korea Music Content Associationから2×プラチナ認定を受けた(Sports Kyunghyang、2026年5月23日/News Culture、2026年5月28日)
  • PUREFLOW World Tour —— 24都市36公演。2026年7月に仁川で開幕し、12月に大阪で閉幕する日程で、グループ初のヨーロッパ5都市(ロンドン、アムステルダム、パリ、コペンハーゲン、ベルリン)を含む
  • Spotifyの月間リスナーは約2,018万人(2026年9月時点)。夏のピークは約2,300万人だった
  • メンバー5人全員がLouis Vuittonのハウスアンバサダーに就任(2023年10月) —— K-POPガールグループとして初のグループ全員就任

これらの数字は散らばった出来事ではなく、一本につながった線だ。チャート、ツアー、プラットフォーム —— どの軸でも、このグループが一つの地点に留まったことはない。

ジャンルの跳躍とメンバーのソングライティング —— LE SSERAFIMの音楽的アイデンティティ

LE SSERAFIMの音楽を一行で定義しにくいのは、このグループがカムバックのたびにサウンドを意図的に変えてきたからだ。

デビューEP『FEARLESS』(2022)のトラップとシンセポップから、『ANTIFRAGILE』(2022)のレゲトンとアフロビーツへ。『UNFORGIVEN』(2023)ではディスコファンクの巨匠Nile Rodgersとの目玉コラボレーションで西洋のディスコを引き込み、『EASY』(2024)はミニマルR&Bでトーンを落とし、『CRAZY』(2024)はハウスEDMとヴォーギングをクラブの語彙として正面から取り込んだ。『HOT』(2025)ではイギリスのインディーデュオJungle(J LloydとLydia Kitto)を迎えて「Come Over」を作り、「SPAGHETTI」(2025)はファンク・ディスコに寄り、先行シングル「CELEBRATION」(2026年4月)はメロディックテクノとハードスタイルにまで届いた。そして2枚目のフルアルバムのタイトル曲「BOOMPALA」(2026)で、彼女たちはまた方向を変えた —— Los del Ríoの「Macarena」をサンプリングしたラテンハウスへ。

LE SSERAFIM ファーストフルアルバム UNFORGIVEN コンセプトフォト —— Nile Rodgersとのコラボが形づくったグローバルディスコ・チャプターの5人集合カット
UNFORGIVEN —— ファーストフルアルバムのコンセプト © Source Music

同時期の他の4世代ガールグループと並べてみると、違いははっきりする。NewJeansはY2Kとアーバンな R&B で一貫したシグネチャーを磨き、IVEはシグネチャーポップとオーケストラルなアレンジで自前の公式を作り上げ、aespaはSFメタバースのコンセプトをサウンドにまで拡張し、(G)I-DLEは自作ダークポップの路線を固めた。LE SSERAFIMは彼女たちと同じ列には並ばなかった。アルバムごとにグローバルポップの新しい座標を打ち、領土を外へ広げていく戦略を選んだのだ。

その戦略を可能にしたのが、メンバー自身のソングライティング参加である。とりわけHuh Yunjinは、4世代のメインボーカル兼シンガーソングライターというモデルの代表例として自らの位置を確立した。『ANTIFRAGILE』では「Impurities」「No Celestial」「Good Parts (When the Quality Is Bad but I Am)」の3曲を共同作詞し、ソロの自作曲を5曲発表し、『CRAZY』収録の「Crazier」をセルフプロデュースし、『HOT』では「So Cynical (Badum)」を共同作詞、『PUREFLOW pt.1』では全11曲のうち6曲に作詞・作曲のクレジットが並ぶ。リーダーのKim Chaewonも「Blue Flame」「Fearnado (love you twice)」「So Cynical (Badum)」「CELEBRATION」に作詞クレジットを持つ。

ジャンルが毎回変わっても歌詞の一人称が一貫して保たれる理由、そして外の環境がどう揺れても自分たちの物語を歌詞の中で更新し続けられる理由は同じだ —— メンバーが自分の物語を直接書いているからである。

バレエからヴォーギングまで —— ステージ言語の幅

LE SSERAFIMのライブを観た人がまず口にするのは、たいていKazuhaのラインだ。Dutch National Ballet Academyでバレリーナとしてトレーニングを積んでいた彼女は、2021年12月にSource MusicのCEOにキャスティングされ、わずか3か月のK-POPトレーニングを経てデビューした。『ANTIFRAGILE』の振り付けにあるバレエのモチーフ —— 脚を頭上まで引き上げるシークエンスはソーシャルメディアでバイラルになった —— は、K-POPの振り付けではめったに見られなかったクラシックダンスの語彙を、そのまま持ち込んだ例だ。

LE SSERAFIM Kazuha —— HYBE公式のKazuha紹介映像より、バレエトレーニング時代のラインが見えるひとコマ
バレリーナからK-POPダンサーへ —— Kazuhaの出発点 © HYBE

しかしLE SSERAFIMのステージ言語の幅は、Kazuha一人では説明できない。『CRAZY』(2024)でグループはヴォーギングを正面から取り込んだ。ヴォーギングは1960年代ニューヨーク・ハーレムのLGBTQ+ボールルーム・シーンで生まれた表現中心のダンスで、K-POPメインストリームの振り付けの中心に据えられることはめったになかった。Huh Yunjinは当時のインタビューで「ヴォーギングは初めての挑戦で、表現力がどれほど大切かを実感しました」と語っている(Korea Times、2024年8月30日)。バレエの端正なラインから、ヴォーギングの大胆な手さばきまで —— ステージ言語そのものを意図的に広げてきたことが、LE SSERAFIMのライブを他の4世代グループと分けている。

対外的な評価も同じ幅を追ってきた。2024年9月には「EASY」でMTV VMAsの「Push Performance of the Year」を受賞し、同年11月にはマンチェスターでMTV EMAsの「Best Push」を獲得した。Coachella 2024への出演はK-POPグループとしてデビューからの最速記録となり、2025年11月にはTokyo Domeで単独アンコール2公演をソールドアウトさせた —— グループ初のTokyo Dome単独公演である。

Crimson HeartからFrankensteinへ —— 世界観の進化

4世代以降、独自の世界観を持つことはK-POPグループにとって新しいことではない。LE SSERAFIMが違うのは、その世界観がカムバックごとに、グループの実際の物語と直接かみ合って動くという点だ。

グループ名LE SSERAFIMは「I’M FEARLESS」のアナグラムであり、六枚の翼を持つ天使「seraphim」の借用でもある。ファンダム名のFEARNOT(피어나)は、韓国語の「花が咲く・よみがえる」という動詞と、英語の命令形「fear not」という二重の意味を併せ持つ(Source Music公式、2022年8月7日)。

アルバムのコンセプトはデビュー以来、一本の線でつながっている。『FEARLESS』(自己宣言)→『ANTIFRAGILE』(Nassim Talebの「ストレス下でより強くなるシステム」という概念の借用)→『UNFORGIVEN』(他人の物差しで赦されることを拒むアウトロー)→『EASY』(難しいことを易しく見せる優雅さ)→『CRAZY』(無謀なまでの自己確信)→『HOT』(ためらわずに飛び込むこと)。HYBEのトランスメディア世界観『Crimson Heart』(ウェブトゥーンとウェブ小説)も同じ流れの中にあり、「Blue Flame」と「Impurities」のミュージックビデオはその世界観の正史として書かれている。

LE SSERAFIM PUREFLOW pt.1 BIRCH SCAR コンセプト —— 虹彩異色、黒い皮膚の異常、鉄製のヘッドピースなどFrankensteinのモチーフが見える5人グループカット
PUREFLOW pt.1 BIRCH SCARのコンセプト —— Frankensteinの再解釈 © Source Music

そして『PUREFLOW pt.1』で、世界観は初めて外部のテクストを正面から引き込む —— Mary Shelleyの『Frankenstein』だ。アルバムタイトル自体がその痕跡を帯びている。原作の「For I am fearless, and therefore powerful」という一節を「For we are not fearless, and therefore powerful」へと反転させ、POWERFULの綴りを並べ替えてPUREFLOWを作った。4種のフィジカルバージョン(BIRCH SCAR / YUSU LILY / PEONY ROOM / TRI ACCORD)のうちBIRCH SCARは、暗い森を背に、虹彩異色、黒い皮膚の異常、縫合された傷、鉄製のヘッドピースをまとったメンバーが、巨大な傷ついた手に追われるビジュアルで公開された。Source Musicが公式資料で示した読みは明快だ —— Shelleyの原作でFrankensteinの怪物は社会の偏見の中で孤独に終わるが、LE SSERAFIMはその結末を「怪物たちが互いを見つけ、ともに恐れを乗り越える共同体救済の物語」へと書き換える(Korea TimesとChosun、2026年5月12日)。

PEONY ROOMのコンセプトは、その反対側にある。デジタルカムコーダーで撮ったようなルックで、爪を塗り、ブランケットを分け合う5人の親密で姉妹的な瞬間をとらえる。恐れという外の風景と、親密さという内の風景 —— その両方が同じアルバムの中に同時に存在することが、今回のコンセプトサイクルを定義している。

ステージで答えた4年 —— FEARNOTとグローバルな軌跡

ここまでが音楽とステージ、物語の中で確かめられるものだとすれば、最後の一つはその外側で積み上がる —— カムバックのたびに次のチャプターの舞台をより大きな規模で開いていく、グループとファンダムの結束だ。

デビューからわずか5か月でリリースされた『ANTIFRAGILE』(2022)はHanteo初週567,673枚で4世代への到達を告げ、その1年後、ファーストフルアルバム『UNFORGIVEN』(2023)はHanteo初日1,024,034枚で記録を書き換えた —— K-POPガールグループの初日売上として新記録だった。続く『EASY』『CRAZY』『HOT』の三部作に2枚目のフルアルバム『PUREFLOW pt.1』が加わり、Billboard 200トップ10は5作連続となった —— K-POPガールグループとしてはTWICEに次いで2組目であり、デビューからの最速記録である。リリースのたびに、4世代K-POPのグローバルな軌跡へ新しい座標を一つずつ加えてきたことになる。

その曲線の最初の頂点がEASY CRAZY HOT World Tourだった。2025年4月に仁川で開幕し、2026年2月のソウルアンコールで幕を閉じた31公演は、世界で3,410万ドルの興行収入と約237,000人の動員を記録した —— そしてその中に、グループ初のTokyo Dome単独アンコール2公演(2025年11月)と、8都市すべてでソールドアウトした初の北米公演(2025年9月)が収まっていた。ライブのステージそのものを答えに変えた4年だった。

LE SSERAFIM PUREFLOW World Tour 仁川Inspire Arenaの開幕公演 —— グリッドステージ上の5人と満員のアリーナを収めたワイドカット
PUREFLOW World Tour —— 仁川での開幕公演 © LE SSERAFIM

2度目のワールドツアーは、すでにその規模を超えている。2026年7月11日・12日、仁川Inspire Arenaで両日ソールドアウトの開幕を切ったPUREFLOW World Tourは日本の5都市を回り、8月にはSummer Sonic 2026(大阪・千葉)への初出演を終え、9月現在は北米公演に入っている。ツアーが回っている最中にも公演は増え続けた。4月の発表時点で23都市32公演だった日程は、11月のマカオ2公演と12月のKyocera Dome大阪2公演が加わって24都市36公演になった。Kyocera Domeの追加は、9月初めの福岡公演の最中に発表された。

FEARNOTのグローバルな分布が、この結束を支えている —— Instagramのフォロワーは約1,112万人、YouTubeの登録者は約866万人、Xは230万人。Tokyo Domeでの単独アンコール2公演のソールドアウト、8都市すべてでソールドアウトした初の北米公演(2025年9月)、マニラ、バンコク、シンガポール、メキシコシティでのソールドアウト公演。そして10月にはデビュー後初のヨーロッパ単独公演が控えている —— ロンドン、アムステルダム、パリ、コペンハーゲン、ベルリン。4世代K-POPのグローバルな軌跡を眺めると、LE SSERAFIMはもはや単に速く動くグループではない —— 新しい領土を最初に踏むグループになりつつある。

現在のチャプター —— 二つの夜のあいだの3年

2023年10月、LE SSERAFIMはゲーム『Overwatch 2』のプロモーション曲「Perfect Night」をリリースした。その年のBlizzConにK-POPアーティストとして初めて招かれ、ステージに立ったのも、この曲を通してだった。

3年後の2026年9月11日、LE SSERAFIMは同じゲームと再び手を取り合う。2枚目のシングルアルバム『Made My Night』はタイトル曲「Made My Night」と「AEIOU」の2曲で構成され、ミュージックビデオは『Overwatch』と共同制作された。ティザーでは、牢に閉じ込められたメンバーをOverwatchのヒーローD.VaとD.Monが救い出す。タイトル曲は特別な誰かに惹かれ、ともに夜を踊り明かすことを描いたポップダンスナンバーで、「AEIOU」は韓国のヒップホップアーティストKid Milliとsokodomoとともに作られたハウストラックだ。2枚目のフルアルバムからわずか4か月でのカムバックであり、韓国以外の地域でのフィジカルリリースは10月9日となる。

そしてリリースの2日後、9月13日にLE SSERAFIMはBlizzCon 2026のクロージングステージに立つ。3年前に初めて招かれた、まさにその場所だ。

同じゲーム、同じステージ、同じ「夜」という言葉。変わったのは、そのあいだの3年だ。 2023年のLE SSERAFIMはBillboard 200トップ10に一度入ったグループだった。いまは5作連続で入ったグループである。あのときはアメリカのラジオフェスティバルに招かれたことがなかったが、9月19日にはラスベガスのiHeartRadio Music FestivalにK-POPガールグループとして初めて立つ。あのときはヨーロッパで単独公演を開いたことがなかったが、10月にはロンドンで幕を開け、5都市を回る。

「Perfect Night」は完璧な夜を歌った。「Made My Night」は、誰かがその夜を作ってくれたと言う。その差のぶんだけ、このグループは一人で証明する場所から、ともに作る場所へ移ってきた。2022年5月、「スタートラインに立った直後にはどんな姿になるか予測しがたかった」あのグループは、いま次の夜がどこになるかを自分で決めている。